31アイスクリーム


こないだ友達と31アイスクリームの前で待ち合わせをしていて
はっと気づいた。
31アイスと同じ。私、31歳になりました。

30歳に到達したと思ったら
また40に向かって登っていくのだ。
なんだか人生って途方もない。

誕生日は直島で迎えた。
エッセイ集にも書いているが
私は瀬戸内の島々が大好きで、8年前から頻繁に訪れている。
今年はすでにもう2回も。

今回は、春の瀬戸内国際芸術祭と合わせて四国旅行。

東京  →  徳島で青ひげ海賊団達(エッセイ集参照)と海沿いバーベキュー  → 愛媛の実家でワラビとイタドリ採り&潮干狩り  →  犬島  →  小豆島  → 豊島  →  直島  →  男木島  →  沙弥島  →  東京

という長旅でした。

 島によって個性が違うことに気づく。
産業、地形、人口、その島が辿ってきた人生によって
島の性格はそれぞれに異なる。
もちろんそれは人々と接する中で感じたことや、
島を何回も訪れてアートと同じくらい、じっくりと体感して
畑や、山や、店や、家の壁、港に浮かぶ船を見て
思った私の感覚みたいなものだけですが。
それでも、
地方都市の持つ個性よりも強烈な気がする。
良い意味で隔離されていることが独特の匂いを生んでいるのだと思う。

住むのと遊びに行くのは全く違うことだと、「高橋久美子が行く!」で
川越に何度も取材に行く中でも気づいたことなのだけれど、
それでも瀬戸内の島々は一度は住んでみたい場所。
とても素直になれる、私にとって秘密基地みたいな
そんな場所だった。

しかし。今回は、そうはいかなかった。
瀬戸内国際芸術祭があまりに有名になりすぎたのでしょう。
観光バスのすごいこと!わざわざ土日を外して行ったのですが・・・
ご婦人たちの群れ、群れ、群れ!!
「まあ、これなんだろか?見てー!なんのこっちゃ全然わからんなー!
ギャハハハ!!」

頼むから静かにしてくれ。黙ってアートを見させてくれ!
ウォイ!!!
あれだけスタッフに入り口で注意されているにも関わらず、
平気で作品に触れている。
心、掻き乱されます。。。 

私の秘密基地が壊されたような、すごく寂しい気分になってしまった。
逆に言えば多くの人達に島の良さを知ってもらう機会かもしれない。
そしてアートに普段触れることのない人達がこれをきっかけに ・・・

どうだろう。できるだけポジティブに考えてみたけれど
どうやったって、招かれざる客なのではないだろうか。
私だって怒る。そうだ、怒っていた。いや、
呆れていた。なんと哀しい大人たちよ。

また静かなときに行こうと思う。

私は、わかりにくいアート作品が好きだ。
じーっと、そこで座ったり立ったりしながら対峙する。
別に答えなどいらない。
私の空っぽのお腹の中を、全く知らない風が吹く。
その清々しさ感動といったら。
それは、初めて行く国のようだ。
頭の中に色んなイメージが膨らんできて
それらのイメージは見る度、訪れる度に、変化していく。
私の成熟と共に。衰退とともに。
去年まで考えもしなかったイメージの断片をノートに書き付ける。
この先も、何度も何度も何十年も寄り添ってくれるのだろう。 
それは瀬戸内の島々に似ている。といつも思う。

 

長旅から帰って、
吉祥寺の31アイスクリームに集合して、友人と呑んだ。
31年間。31種類の味が 今の私を動かしている。
またいつもの生活。
古い居酒屋、スターバックス、ネオンの光、玄関の靴、
退屈さも葛藤も引き連れることのできる毎日が、ここにある。