昨日、右下の親知らずを抜きました。
歯茎の下で、真横に寝転び、
さらには、横の奥歯君に悪さをしている今日この頃だったので、
これはもう抜かなければと、意を決したわけです。
しかし、抜くとは言うものの、
出てないもんは抜けません。
「切開して割るんだぜ。へっへっへー。」
というのがあまりにも、えげつないために
「抜きます。」と皆言ってるだけで。
私は、本当に弱虫でした。
恐怖のあまり睡眠不足に見舞われるという不安満点な状態で大学病院に到着。
大学病院といわれるところに来たことなど今回が初めてでした。
「財前教授の回診です」というよからぬイメージばかりが先行します。
いざ『手術室』と書かれた部屋に入って驚きました。
だって、私が予想していた、
「メス、ハサミ」とかできそうな感じは全くなく、
なんと、そこは普通の歯医者さんと同じ状態だったのです。
ウォイ!隣の診察室と変わらんやないかーい!と突っ込みを入れたい気分満点でしたが、なんせ、担当の女の先生が30前(多分)のクールビューティーで、
わたしの明らかなびびり具合を完全にスルーしているのです。
突っ込みはおろか、心の内を明かす隙などどこにもありません。
歯の一本にガクブルの30前女。
かたや毎日何本も歯を抜いている30前女。
なんか、この辺で嫌な予感はしていました。
もしかして、私たち、ワカリアエナイ?
そして案の定、事件は起こってしまうわけだ。
今まで見たこともないような、ロケット級の麻酔を打たれ、
あまりの痛さに、私は血の気が引き貧血状態になってしまったのでした。
情けないやら、痛いやら、悲しいやら、隣の人達はバッキバッキのゴッリゴッリのメッタメタにされてるやらで、もう、この世の終わりみたいになっていきました。
まだ始まってもないのに。
しばらくリクライニングを倒して寝ることになりました。
すると、天使のような看護士さん登場。
「大丈夫ですか?足の下に毛布入れて楽にしましょうね。血圧も測りましょうね」
何故か、この人のためにも頑張らねばと思いました。
ちなみに、私は血圧が低いことで有名で、この日の血圧は80ー50でした。
例のクールビューティーが
「落ち着くまでやりませんから」
というので、とにかく落ち着かせました。
目をつむって、息を吸って吐いて。
でも、落ち着くはずありません。
ヒーリングのCDが、アロママッサージ並みににかかっているのに
隣には、口あきパックみたいな布を顔にかけられた不気味な人々がいるのです。
そして彼らの歯をバキバキに切り刻む音が響き渡っているのですから。ユニゾンでね。
私は、孤独でした。
もはや、看護士さんも先生達も私の周りにいなくなっていたのです。
お茶でも飲んで、一休みしていたらどうしよう。他の人のを抜いてたらどうしよう。
このままでは麻酔が切れた頃にやってきて、その状態で歯を・・・ギャー!!!
よからぬ考えが渦巻きます。貧血でもいいからやってくれ!もう迷わない!
クールビューティーが何やら向こうで棚を開けたりしていました。
体を反対に向けて、大きな声で言いました。
「あの、すみません。すみませーん。もう私大丈夫です。歯を抜いてください」
「あ、大丈夫ですか。わかりました」
なんという会話 でしょう。
もう、何もかも、おっかしーと思うしかなくなっていました。
ネタにするしかない。。。
男のベテランぽい先生登場。
もう、財前教授みたいに、いっぱいオペとかしてそうな。
彼は、ペンギンみたいな私に言ったのです。
「大丈夫、大丈夫。すぐに抜いてやっから」
そう、それです!!!私がほしかったのはその言葉!!
たったそれだけで、どれだけ心が安らいだことか。
頑張ります!私、頑張れます!そう思いました。
次の瞬間、皆と同じ、口あきパックみたいな布を顔にかけられ、
そして意識が遠くなるような恐怖を味わったのでした。
「なに、お前、ここに麻酔したの?ちょっとかしてみろ」
「おい◯◯貸して。何してんの、早く!」
え?え?聞こえてんぞーおい!!!
私の、『恐怖の言葉集』に入れさせてもらいたいと思います。
死闘の末、無事、7つくらいに割れて
親知らずは摘出されました。
よくまあ、こんなバラバラになるもんだ。
クールビューティーが
「歯、持って帰ります?」
と言うので
「いりません」
と言い張りました。が
「やっぱいります」
と言い直しました。
だって、せっかく私の体の一部として
生まれてきたのに、一度も
おいしい食べ物を噛むことなく
29年間、眠っていたのですから。
せめて持って帰ってやろうと思いました。
バラバラにしてごめんね。
でも、でかすぎ。とても1つ分とは思えません。
お陰で、顔がパンッパンに腫れてらー。
どうしてくれんだい!
ご飯が食べれるって本当に幸せなことだったな。
色々ありましたが、
何とか無事歯を抜けました。
私、歯を抜いたら人生変わる気がする。
そう思っていました。
でも、それに気づく余地もないくらい
苦しんでおります。もういいです。
そんな少女マンガみたいなロマンスいらないので
早く良くなってほしいです。
おわり
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