かまくら in the house

寒いですね。
本当に、寒いのが苦手です 。
高校時代、寒すぎることを理由にずる休みしていたくらい、寒さに弱い私です。

しかし、雪が降るとなると寒いにも箔がつく。
中途半端な寒さではないことを褒めてやらねばならないという気持ちになります。
四国生まれの私にとって、雪は天からの贈り物というくらい
ドラマチックで、 特別なもの。
雪が降り始めると、小学校は半日で終わり
おじいちゃんから肥料袋をもらって山に、そり滑りに出かけ
屋根の上から雪をかき集めてかまくらを作り
そして次の日はもちろん算数も国語も、雪合戦に変わるという
お祭り具合。

桜より俄然、雪派でした。
北国の人に言うと「ふざけんな」と言われますが。

あれは、去年の丁度今頃だったでしょうか。
夕方、電車から下りると雨が雪に変わりはじめました。
「やった!雪だ」
カチカチに凍える指先に息を吹きかけ、るんるん気分で帰りました。
同じ『水』出身なのに、雨はきっと「差別だ!」と怒るでしょう。

洗濯を干しっぱなしだったことを思い出し、
急いでベランダから半分凍ってしまった服を取り込みました。
そして、渋々、家の中に干すと
約束していた飲み会に向うため、再び家を出ました。

その夜、雪はやむことなく、しんしんと降り続けました。
店を出ると、辺り一面真っ白。ホワイトカーペット、夢の世界でした。
帰り道「きゃーきゃー」言いながら、友達と雪合戦をし、
雪だるまを作り、「じゃーねー」と上機嫌で帰宅。

玄関を開けると。
ん。。。やけに寒くねーかい?
氷点下の寒さじゃねーかい?
恐る恐る居間の扉を開くと
ジャジャーン!!
そこには、天然かまくらがあったのです。
一瞬、このまま知らなかったふりして眠ろうかと思いました。

だめです。
寝ちゃだめです。
目をしっかり開けて現実を見なきゃいけません。
もう一度見ました。
かまくらです。
かまくらがあります。
なんと、ベランダの扉がバババーンと全開になっていたのです。
洗濯を取り込んだとき、ちゃんと閉まっていなかったのでしょう。
その扉とは、おばあちゃん家の勝手口のようになっていて、
一旦しめ忘れたら、風で全開になるという
たいそう物騒な仕組みなのです。
扉、閉めたはずなのに。
そういえば最近なんか調子悪かったなあ。
あー、なんで、早く大家さんに見てもらわなかったんだろう。
なんで、出る前に確かめなかったんだろう。
後悔は募るなんてもんではありませんでした。
こういうとき誰を呼べばいいのでしょう。
警察?事件っちゃ事件です。
救急車?傷ついてます、心が。
JAF?似て非なるものです。
吹雪は強くなり、雪はミサイルのように我が家を攻めてきました。
恐ろしい光景です。
こたつの前に、かまくらがあるのです。
むしろ、穴あけてそっちに入ってみたいくらいです。

私は何を思ったのか、とりあえずコートを脱ぎ
マフラーを外し、
玄関から長靴を持ってくると
台所に行き、まな板をとりました。
今流行の、ぺらぺらのプラスチックの紙みたいなまな板。
使い易いよと、お母さんが送ってくれた物 でした。
その黄緑色のおしゃれな板をシャベル代わりに、
巨大な敵に向かって挑みます。

どんどん吹雪は強くなりました。泣きたい。大好きな人に裏切られるなんて。
深夜の雪かきは続きました。
塵も積もれば山となるもので、雪をかいている間にも、
容赦なく、白い悪魔は積もっていきました。おもしろいくらいに。
いや、全然おもしろくないですけどね。
20分後、なんとか家の中のかまくらは無くなりました。

ところが・・・
バカでした。
外に出した雪に詰まって、扉が閉まらない!
うそやろ。
こんな夜中に都内に雪かきしてる人間がいるで!
私はここにいるよと、叫びたい気分でした。
隣の家の人を叩き起こしたい気分でした。
吹雪の中に出て、
再びまな板雪かき、20分。
気づけば頭の上に、雪が積もっていました。
私は、わかりました。
何がって、
北国の人達の気持ちが。
雪をなめんなよ!ということを
身をもって体験したのでした。

しかし、これが雨だったら、
階下に水漏れしていたでしょう。
雪だったからこそ、留まっていてくれたのです。
驚くべきことに、かまくらの下の絨毯は全然濡れていませんでした。
ありがとう、雪・・・。

ということで、「なめんじゃねーぞ、雪」という話でした。
でも、相変わらず私は雪が好きです。