書き物の途中、 近所の商店街をふらっと散歩する。 お肉屋さんでお肉を買って、 お豆腐屋さんでお豆腐買って、 コーヒー屋さんでコーヒー飲んで、おしゃべりして、 帰り際自転車屋のおじいさんと立ち話して。 ほんの一時間のつもりが三時間くらいたってしまうことも あって、ふらっと・・・というか、結局ガッツリ散歩だ。
お豆腐屋さんのおばあちゃんに 実家の柚子をあげたら、 かわりに 焼きそばくれたり、ときにはうどんくれたりする。 お礼を言いながら、そこは、お豆腐じゃないんだなあと、笑った。 お肉屋さんのおばちゃんは、機嫌がいいと 長話してくる。 「お姉さん、喋り方面白いよね。お国どちら?」 あの、それ聞くのもう三回目、いや四回目ですよ。 「四国なんです」 「そう、方言いいわね」 おばさんは千葉なんだけど嫁いで45年以上になるから こっちが故郷みたいになっちゃって、実家には3年も 帰ってないのよと面倒くさそうに言った。
「 お姉さんは、どう?どっちがいい?」 「へ?何がですか」 「だから、東京と四国とよ」 うーん。悩んでしまうね。 ここで四国のが断然いいですとは言えないし。 前は四国の方が断然好きだったけどね。 今も、四国は好きだけど、東京に来て10年か。
「東京」というくくりだからいけない。 渋谷のスクランブル交差点とか山手線の満員電車を 思い浮かべるとそりゃとんでもないけれど。 私が住んでいるのは「東京」じゃなくて、 みんながいる「この街」なんだと思う。 引っ越して2年。 ちょっとずつ、馴染んできているんだな、私。 東京にきて、何回も引っ越ししたけど、やっと 住みやすい自分の街を見つけたなあと思う。 この街のゆっくりとした速度や、温かい人の感じも 私には合っているんだなあって思ったが、 ちょっと考えた。。。。 いやいや違う、そうじゃないかも。 どの街も、ちゃーんと自分が向き合うことができたら 絶対に好きになれるんだろう。 私は、この街の人達と「東京の人」としてじゃなくて ご近所さんとして、初めて二年間しっかりと向き合った。 初めはよそ者としてなかなか受け入れてもらえなかったりもしたけど 距離感がちょっとずつつかめてきたのかね。 ちゃんと私の居場所になった気がする。 自分がちゃんと向き合った場所はちゃんと居場所になる。
「うーん、どっちも好きですよ。 この街のことけっこう好きなんですよね」 と私は言った。 「そう。じゃあ、ずっといなよ。いい街でしょ」 と、おばさん。なるほど、そういう手もあるのか。 ふるさとを、自分で作るのもいいな。
街を歩くと予期しないことと出くわすから面白い。 自分一人では作れないストーリーが勝手に動き出す。
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