旅人


熊本に一週間ほど一人旅に行っていた。
九州って、広いうえに隣の県に行こうとしてもえらい時間がかかるのね!
ということで今回は熊本県内をうろうろ。
それにしても、くまもんおりすぎですね。
熊本の小学生が好きなキャラクター、
全学年でくまもんがトップらしい。
ドラえもんや、アンパンマンとかプリキュアとか差し置いて。
これってすごいことだぞ。あのギラっとした野生の目にやられとるらしいね。

一人旅は気楽だ。
行きたいところに気を使わずにふらふらと。
自分だけだから、自分と話をしている。
どうする、次どこいく、夜やけどこのカフェ行きたいよな
だったら行っとく?行きたいよな?行こう!
という具合に。

ORANGEというカフェと橙という書店が隣り合うお店に行く。
居心地良く、店主のお姉さんと話をして熊本の名所を教えてもらう。
バーも紹介してもらった。迷ったらいけないからねと、
つっかけのままギラギラの繁華街を案内してくれた。
そしてビリーズバーという地下のバーへ。
洒落ているなあ!銀座なんじゃないかというくらいに、味のあるカウンターと
大胆に飾られた蝋梅の花の良い香り。
一人でウイスキー飲んでいると、隣のおじさまが、お酒をご馳走してくれた。
その後も何人か入れ替わりながら、気がつけばなぜだかUFOの話で盛り上がる。
「愛媛の女がこんなところに一人。お、もしや君も宇宙人なんじゃないか!?」
おっさん、酔っ払いすぎである。

次の日、山鹿へいく。
どこの県もローカルバスの空き具合といったら。。。
申し訳なくなる。貸し切りバス状態で揺られること70分、
知る人ぞ知るという名湯、山鹿に到着。やべえ、人っ子一人いねーど!
私は山鹿という町がすごく気に入った。豊後街道の風情ある町並みと
それなのに人が全然いない感じたるや。
観光地になりきれてない「ぽやん」とした商売っ気を微塵も感じない町が好きだ。
八千代座という明治時代に建てられた芝居小屋には「3月に海老蔵さんが来るんだ」
と、入る店、温泉、旅館、皆が口を揃えて自慢してきた。その顔が微笑ましい。
自分の町を自慢できる人って嬉しくなる。
山鹿温泉は紛れもない名湯だった。
白くてとろっとしてて、のぼせやすい私にぴったりのぬるいお湯である。
 散々いろいろな温泉に行ったけど私のベスト3に入るなあ。

「あんたどこからきたと?」
「東京です・・・」
「何でまたー!!こんなとこにー!!どうやって?」
「いや、飛行機で」
「ええ!わざわざ飛行機で!」
そりゃそうだろうなあ。
わらわらとおばちゃん集まる。湯船の中で囲まれる囲まれる。
「そっちはぬるかとやけん、こっちきんしゃい」
「は、はい!」
地元のおばあさんしかいない熊入温泉センター。200円。
綺麗な温泉よりも私はこういう、地元の人しかこないちょっとボロくて
使われまくっている銭湯が好きだ。
外では昼間からおじさんが カラオケ熱唱。
こういうの好きだ。たまらなく。
おばちゃん、いくらぬるいお湯だからって
1時間も入ったら、タコになるとよ。

旅館では、山鹿の酒蔵、千代の園で買った日本酒を飲みながら夕食
「失礼ですが、どこからいらしたんですか?」
「東京です。地元は愛媛なんですけどね」
「ええー!愛媛とね。懐かしいなあ。私は坂出(香川県)に10年住んでいましてね」
隣のご夫婦に話しかけられて、夕飯は楽しいひと時になった。


たまにはこういう旅がいい。
人がいろんなところで生きているんだなあって思う。
一人旅だからこそ、自分が一人じゃないことを再確認する。
二人なら出会わないだろう出会いを体験することができる。
山鹿の人々は本当に温かかったなあ。
山鹿羊羹のお店でも、喫茶店じゃないのに
なぜかお茶を出してくださって、おじさんと30分くらい話したしなあ。
熊本城でも、お城案内のおじさんと城談義で盛り上がったなあ。
それから熊本の図書館にも驚き。ジェームズ・タレルがデザインしてるのね。
見に行きましたとも。ぽかーんと、トレードマークである空がくり抜かれていました。
くさは餅っていうお餅屋さんも、美味しかったー。
歩きまくり、バス活用しまくり、私は自由にどこへでも行けた。
日本って楽しいなあ。まだまだ知らない場所がたくさんある。

その後、新幹線で岡山へ出て愛媛に帰った。
姉に二人目の子どもが生まれたのだ。
こんな風変わりな伯母ですが、どうぞよろしくね。