やっと部屋が落ち着いてきた。
GWに引っ越したのである。
みんなが遊んでいる時に必死に荷物を整理して、
みんなが動き出したと同時にドドドっと仕事を開始して。
休んでないやないかーい!
でも、新しい家は住み心地良いから嬉しい。

前よりも広いし、窓が多くて風通し良いのがお気に入りだ。
それにサンルームがあるので、ついつい日向ぼっこしてしまう。
家が好きだとなかなか家から出ないんだなという発見。
これは良いのか悪いのか。
前の家のとき、「家と砂漠」という写真詩集ができたけど、
今度の家では「私の家は刑務所」なんて言葉は出てこないだろうなあ。
「私の家はベッド」とかになってしまうだろうな。

しかし人間欲深いもので、今度は、
マンションの前が草原だったらとか、海辺だったらなあなんて思ってしまうのだ。
視力0.02の裸眼で目覚めたとき、
家々の屋根が、草原や海原に見えるのだ。本当に見えるのだ。多分寝ぼけているのである。
メガネをかけて窓をあけて、ああ東京か。となる。
屋根の海原は、これはこれで綺麗で
ハットリくんみたいにぴょんぴょん飛び渡れそうだなと思う。

この屋根の分だけ人が住んでいるとしたら
東京って本当に人、多いんだ。
土日にでかけたり、ラッシュ時に電車に乗ったりすることがないので、
建物はたくさんあるけど本当に人がいるのか今一、信じられない節があり。
ついつい、ぽつんと私一人が暮らしているように思える。
夜ぶらぶら街を散歩するとき、家々の前に山のように出されたゴミを見て
このゴミ袋の数だけ、人がいるんだなと気づく。
息を吸ってるだけではなく、人はこうやっていらなくなったものを家の外に出して、
好きな物だけ入れて生活しているんだなと考える。
たまに蚊が入ったりもするけれど、それさえも蚊帳をつって自分が檻に入らなくても
今は退治できる方法がいくらでもある。
ネットで頼んで運んでもらい、出前の電話をし、窓を閉め切ってクーラーかけ・・・
家はどんどん無敵になっていくのだ。
実家に帰り、全く無敵ではないのに快適な日々を送ると、体をすーっと風が通り抜け、
いろんな力が漲ってくるのがわかる。快適と無敵とは違う。

深夜、好きな人の部屋の窓にコツンと石をあてると、
数秒後、彼はカーテンを開け階下の私に気付く。
そして親にばれないように二階から家を抜け出すと
二人は手をつないで逃避行する・・・
というのが私の永遠の憧れだ。