そうだ日記を書こう

午後2時。グワングワン揺れる体で起き上がる。
そうだ、実家か。
昨夜あげたtwitterの返信がすごいことになってる。
のそのそ手すりをつたって階段を下りる。
眼鏡がないから何も見えない。
旅行カバンに手を突っ込んで眼鏡ケースを探る。
ん、何か湿っぽい。
あちゃー、ライブ後の汗だくの服をそのまんま突っ込んでいたんだった。
重くなった衣装を取り出し、今日が何日で何曜日かを確かめる。
10月1日、土曜日。ラストライブは昨日。。。じゃなくて一昨日か。
昨日がすっ飛んでるや。 

そうか、昨日愛媛に帰って、悪化した風邪を

「寝たら治る!」

と言い張ったけど、
母に無理やり、顔なじみの病院に連れて行かれたんだった。

「こんにちは、お久しぶりです。」

笑顔を振り絞り保険証を出した途端 

「芸能人が来た!」 

「芸能人じゃないですよ!」 

「芸能人でしょう!」 

「いやいや違いますよ!」 

看護士さんと3回くらい言い合って、
もう何でもいいや、と、スリッパに履き替え
誰もいない待合室のソファに腰掛けた。
まだ私がバンドを抜けたことを誰も知らない診察室で
みんなピーチクパーチク騒いでいるのが聞こえる。
だから来たくなかったんだよなあ。
恐る恐る辞めたことを告げる。 

「これからどうするんだ!」 

「文を書いたりとか・・・」 

「じゃあ、芥川賞目指すんだな!」 

「・・・そうっすねー」 

ぼんやりした顔で答える。

帰りがけ

「ファンがいるから」

と、差し出されたちっちゃな紙きれに自分の名前のサインを書く。
確実に熱が上がっていくパターンだった。
帰ってきて、もうだめだ、寝なきゃ、でも薬のまなきゃ、じゃあご飯食べなきゃ
と、母の作った、いなり寿司を3つ食べて薬を飲む。

しばらくしたら、急に目眩がして、何だ何だ?
びびって薬の説明書きをもう一度見直すと

「眠気やふらつくことがあるので、車の運転を控えてください」

・・・・・・

そのままベッドにノックダウン。
夜中、目が覚めて、トイレに行こうと起き上がるが
壁も床もふにゃんふにゃんと揺れている。
すげー。こりゃ風邪より危ないぞ。
ベッドの中、悶々とする。
目を閉じれば、体が地中深く沈んでいくようで怖い。
こんな感じで年寄りは寝たきりになるんじゃないかと思ったりした。
必要以上の薬と、体力の低下で、余計に暗闇が際立つ。
私の背中と布団は縫い付けられてしまったんじゃないか。
なのに、しばらく目だけパタパタさせていたら朝が来て、
そこから寝続けた結果、昼が来て、
午後2時、無事縫い目を解いて、自分の足で立ち、階段を下り
生還したわけだけれどね。

それで、健康的に母と畑にでも行こうかと思った。
が、何となくノートに向かった。
さほど大切な一面でないはずなのに。 
 
 
久美子