全国で青年市長が頑張っています!
高橋久美子(以下K):お久しぶりです。今日はお忙しいところありがとうございます。よろしくお願いします。
井原巧 市長(以下I):はい、よろしく。今日帰ってきたん?
K:いえ、昨日。集中して執筆しようかなと思って。東京だと誘惑いっぱいなんで。あ、今作家活動をしているんです。
I:そうそう。いつ辞めた言いよったかいな?
K:あ、9月いっぱいで。実はー抜けたんですよー。
I:見た見た、新聞に載ってあったよ。
K:ほんまですかー。
I:震災の頃はまだやってたもんな。
K:そうですね。震災のことが、みんなそうやと思いますけど、自分の人生の中ですごくいろいろと考えるきっかけになりましたね。
市長さんも何度も被災地行かれてましたね。
I:そう。陸前高田の方には7回行ったよ。50歳以下の『全国青年市長の会』っていうのがあって、全国に61人おるんじゃけど。僕、その会長やってまして。で、陸前高田の市長もメンバーでね。その関係があって、震災支援をしているんです。今度も11日追悼式に行ってきますよ。
これ見てください。
(市長、お守りを取り出す)
これはね、陸前高田の「希望の一本松」ってあったでしょう?
K:はいはい。
I:一本だけ残ってね、あと7万本くらい流れたというのね。
K:はいはい、そうでしたよね。
I:その松の木を一本に組み上げてね、それで清水寺のお坊さんが大日如来の絵を書いて(陸前高田市の)市民が一人一回づつノミを入れて掘っとるわけよ。で、それが出来上がったら清水寺に奉納する言うて。
そのね、一番最初の始球式というかね、第一刀のノミを僕と陸前高田の市長とで入れたんです。で、最初の木をほら
(お守りの中を開けると木くずが出てくる)
K:あー。
I:もうぶしょぶしょになってるけどね。ほなから、これは貴重なんよ。ずっと持ってるんです。「鎮魂の思いを込めて 大日如来像」って書いてあるんです。
(お札を開いて見せる)
K:ほんとやー。すごいですねー。じゃあ、(陸前高田市には)特別な思いがあるんですね。
I:そうです。今、桜ラインっていうプロジェクト(http://sakura-line311.org/)もやっていてね。今回津波が来たラインに10年かけて桜を植えて行こうっていうプロジェクトなんです。主催は地元の若い青年団だけど、後援を陸前高田市と僕らの会とがやっているんです。だから11日には植えに行くんです。
K:植樹式なんですね。
I:そうそう。まあ、こういうのも縁じゃね。
K:そうですね。まだまだ全然終わっていないですからね。仮設住宅のことも含め、問題は山積みですもんね。
I:そう。なかなか時間はかからいね。そして東北、四国からはまた遠いけんねー。すぐ行けたらいいんじゃけどね。けど、引き続きこれからも支援していきますよ。
K:はい。
K:私ね、市長さんの出している本に興味を持って。(『市長の夢』http://dream-project.info/shichounoyume/top.php)
I:ああ、読んでくれたん?
K:はい、読みました。若い人の政治への無関心ってすごく問題やと思っていて。そんな中で、若い市長さんが夢持って頑張ってるっていうリアルな本ですね。悪い話ばっかりの中、希望を感じる。それに、身近に感じます。政治って難しそうだし、めんどくさそうって思ってしまいますもん。どうしても。
I:高橋さん、これね、青年市長のメンバー。(名簿と分布図を持ってくる)東京の方は若い市長が多いよね。これだけね。愛媛もわりと若い人多いんよね。
K:おおー。50歳以下の市長さんですね。33歳とか!すごい若い方もいますね。
I:わしももうすぐ青年市長引退じゃ。
K:若い方、頑張ってるんですね。今日は政治家を志したきっかけとか、どんな気持ちで毎日、市長として過ごしてらっしゃるかとか、そういう話が聞けたらいいなと思っています。
I:はいはい、わかりました。
授業中に日本の人口を市別にずーっと上から順番に並べていった。
K:市長さんは、伊予三島市の出身ですよね。
I:そう、高橋さんと同じ土居町ではないんじゃけどね。
K:えっと、小さい頃はどんな子だったんですか?
I:とにかく明るかったな。
ゆか叔母(以下Y):おばちゃんも中学の頃からしか存じ上げないけど、すごく明るくて周りにいつも友達がいましたね。
K:へー。
I:おじいさん(井原岸高氏)が政治家だったから、人に馬鹿にされるのが悔しいっていう気持ちはあったと思うんだけどね。おじいさんが落選したときなんかは、やっぱり馬鹿にされたこともあったからね。
それと今でも覚えているのは、小学4、5年生になるとね、社会の副読本で『紙の町伊予三島』っていうのが配られるのね。それを読んでいて、伊予三島っていうのは何気に結構大きな製紙の町じゃなあと思いながら、ぱっと人口を見たときに、えらい小さいねや…と思って。3万8000人じゃろ。丁度、その頃授業で地図をくれて、後ろに日本の全国の市の人口が書いてある。それを見ると四国って意外と田舎なんよね。それまでは全国やかゆうのは意識したことがなかった。九州よりも北海道よりも四国は小さいのかって。地理とか人口にすごく興味を持ったね。それで、授業中に日本の人口をずーっと上から順番に並べていったん。
市別に。
K:、Y:えー!!
I:全部大学ノートに控えていった。5年生のときよ。それが、いきすぎてね、算数の時間中にもわしはそれをしよった。
K:、Y:ははは!
I:国語の時間にもしよった。そういう変わったとこがあったな。心の中で、うちの町は何番目じゃー。とか、この町には勝ったーとかね思うのが好きだったんよね。
K:へー!
I:今でもね1969年のデータじゃけどね、大体覚えとるよ。
東京23区864万5千、大阪市301万人、京都145万人、神戸125万人、
K:ほはー!!
I:広島は今は100万人おるけど当時は60万1千、福岡市が80万、北九州が105万。
K:当時は北九州の方が大きい街だったんですよね。
I:そうそう。そして松山市32万、とかね。高松28万、お!松山は高松には勝っとるなとか。
K:あははは。
I:そうやって見るのが好きだったん。そうしていると、自分のいる伊予三島っていうのは小さいなあって思いよった。
K:その頃から、町に興味があったんですねー。
I:そう、あった。そして、負けたくないっていう気持ちが強かったね。勉強とかスポーツとか別にして、おらが町が負けたくないと思うようになったんよね。小学生の頃。でもその気持は今でも生きているよね。
K:その頃の夢は何だったんですか?
I:まだ夢っちゅう夢はなかったね。野球選手とかそのレベルよ。野球は好きだったから朝から晩までしよったけんね。自分らでユニフォーム作って、隣の学校の奴らに対外試合申し込んだりしてね。まだスポ少とかないけんね。ジャイアンツのユニフォームお揃いで。校区外のチームと試合して、まあ、最後は喧嘩になって終わるんよな。
K:あははは。子どもですね。
I:そう、あとは電車で寒川(隣駅)まで行って缶蹴りしたり。校区外に出たらいかんかったんよ当時。一回先生に探されたのう。
K:えー。大分やんちゃですね。で、あの、勉強は…
I:勉強、せんかったね。
K:え!市長さんとか、すごい英才教育されてそうなイメージですけど。
I:勉強せい言われたことは一回もないね。勉強はなんちゃあせんと遊んでばっかりだったね。習字とそろばんはまじめに行きよったけどね。
K:じゃあ、いつ頃から政治とかそういうのに目覚めたんですか?やはりおじいさんの影響が大きいですか?
I:じいさんの影響は常にあるわけよ。おじいさんがポスターになっていたり、国会中継に映ったりすることもあるじゃろ。そしたら、同級生に褒められることもあれば馬鹿にされることもあるわけ。だから、馬鹿にされるのだけは嫌だったから、新聞は小学生の頃から端から端まで読みよったね。
K:えー!そんな子なかなかいないですよ。
I:社会がとにかく好きだったん。でも政治家になろうとは思ってなかったね。町に関心があるというのと政治っていうのはまた違うでしょう。
K:学級委員長とかするタイプでしたか?
I:確かに中学の頃は学級委員長や学習委員やしてたね。
K:じゃあ、みんなの前に立ったりまとめたりは得意だったんですね。
I:今でも覚えとることがあるよ。中学のときわしらのクラスは英語ができんでね。わし、みんなに「テスト白紙で出したらんかー」って言うてね。一回白紙で出したことある。それで呼び出しくらったね。
K:ひーやー!!
I:まだあるな。技術の先生がね、いっつも遅れてくる先生だったんよね。あるときにわしゃ頭にきて「もう今日は授業中止じゃーみんな、外で遊ばんかー」って授業をボイコットして怒られた記億がある。
K:へー!その頃から、みんなを団結させる力っていうのがあったんですかね。
I:いやー。変な正義感はあったね。不良でもなくて普通の子だったんじゃけどね、ちょっとがいな(気の強い)ところがあったんやろね。
(ここで叔母が高校時代のアルバム出す)
Y:めっちゃ市長かわいいですから。5組ね。はいこれ(笑)
K:えー!めっちゃ美少年!うわー目がぱっちり(笑)
I:だろ。ジャニーズそっくりなときあったけんな(笑)
Y:いやー。スマートだったのよ(笑)
I:体重50キロだったけんね。今70キロ……
Y:今はふくよかになられてー(笑)
I:今はもう、どうでもええんやけど。足半分しか上がらんし
(一同爆笑)
K:おばちゃんはどれー?
(しばし、思い出話しに花が咲く)
嫌なこともね言わないといけないよね。
K:私ね、市のHPを昨日見ていたんですけど。HPに市長の交際費に今月いくら使ったとか載ってるじゃないですか。こういうの凄いですね。
I:そうね。そうそう、今度ね、1500万かけてHPやネットのシステムの構築をやり直すんです。
K:、Y:えー!1500万!?
K:市長、それちょっとかかりすぎでしょ!
(秘書)システムとかですね。全部やりかえるんです。どうしてもシステムってなると外部業者になりますんで。
I:たかいのーと思いながら、でも24年度に、根本から全部変えようということに。
K:いやいや、大分高いですよそれ。
K:30万くらいでできるんじゃないですか?
(秘書)いやーそれではちょっと。
I:ほらー。(高橋も)言いよるでないかー。
(秘書)音声読み上げソフトですとか…
I:目に障害のある人にも知ってもらえるようにするからいろいろ変えないといかんのよね。
K:えー。それにしても高いなあ。そもそも今ってアクセスはどのくらいあるんですか?
(秘書)ちょっと今ここではわかりませんねー。(※年間アクセス36万件)
K:私もめったに見てないですけどね、おじいさんやおばあさんはもっと見ないと思うんですよ。うちのお母さんですらあんまり自分でパソコン開いたりしないです。市報の方が見やすいっていうのがあるみたいです。で、私達くらいの20代30代になると逆にパソコンで市のHP見るってなかなか聞いたことないですもん。
だったら、一体市民の何割がHPから情報得てるんだろう。若い子は多分、広報もなかなか見ないんじゃないでしょうか。
そういう現状の中で、市民とどうやってコミュニケーションをとるんですか?
I:わしの基本的な考えは、市政は家庭、市民は家族いう考え。
K:はい。というと。
I:家族経営というのはこの世で一番効率的な経営だと思うん。例えば僕が家に帰るでしょ。疲れているからワイシャツをポーンと脱いで洗濯かごに入れるよね。その間に嫁さんはご飯の準備をしてくれて、わしは何気にご飯を食べてという行為を一日しよるよね。もし夫婦仲が悪くて、洗濯してくれないなら、僕はクリーニング屋さんに出す。ご飯を作ってくれないなら外食する。だけど全部お金に置き換えていきよったら、家計がパンクするよね。ほんだからね、家族っていうのはお互いに見返りは求めないけど、知らんうちに支えあっとる。一番少ないお金で上手く経営されているのが家族でしょう。自分で出来ないことは家族で支え合う。家族でできないことは初めてお金で済ます。だから市役所もそういう風になればいいなと思っとる。町全体がね。サザエさんの家族見てたらあったかいよね。逆にお金で済ませている家族の方が幸せ感が少ない可能性もあるね。だからやっぱり家族を例にして考えているね。
K:それは具体的にはどういった考えでしょう?
I:うん、例えば見返りを求めないというのはどこからくるのか。それは信頼関係とか愛情とかよね。
K:そうですね。一緒にテレビ見たり、他愛もない話で笑えたらそれだけで安心できるのが家族ですもんね。
I:そうでしょう。市に置き換えたらまずは、不信感があったら家族にはならんだろう。お父さんに嘘つかれとるとか嫌でしょう。
K:嫌ですね。
I:市民にちゃんと伝えるということ。それから透明性があるということ。公平に扱うということ。子ども三人おってこっちの子ばっかり可愛がってってなったらいかんでしょう。それをお父さんは心がけんといかん。それを市役所に置き換えたら、さっきの話に戻るけど、広報やHPは良いことも悪いことも悩みを共有するために大事なツールなんよね。嫌なこともね言わないといけないよね。今政治家が信頼をなくしている原因は、大きな公約で皆を喜ばせておいて嘘だったりして、そのときの落胆の方が遥かに大きかったり、本当のことを伝えずに自分のとこの人気を取ろうとして相手の足ばかり引っ張っているんよね。中傷合戦ばっかりやって自分が勝ったらええ思うとるけど国民はもっと賢いから喧嘩している両者を見て、こういうお父さんお母さんになってほしくないってそう思いよるよね。
K:そうですねー。両方の信頼がなくなっていってますよね。本当に大事なところにいつまでたっても行き着かないというのがありますね。
I:だからね、市報も書く側の立場じゃなくて読む側の立場で書けっていつも言いよるんです。あとね、うちの市役所は3月の最後の日曜日と4月の最初の日曜日だけは開いているんです。職員提案で去年から。
K:、Y:へー。
Y:でもみんな知ってるんかな?
I:何でかというと、この町が転勤族が多いけん。少しでも転勤して来た人が楽にできるようにっていう職員の提案で、残業代は取らずに、職員がローテーションでやってるんです。そういう提案は、やっぱし褒めてあげるんよ。去年からなんです。
あとは、粗大ごみ。粗大ごみは誰が運ぶことが多いかな?
K:お父さんかな。
I:ね、旦那の仕事よね。なのに粗大ごみセンターが開いてるのが平日の3時半までの受け入れというのは良いのかな?とうちの職員が気づいて、毎月一回は土曜日を開けるようになりました。その代わり平日を一日休みにする。そしたら給料を余分に払わなくて済むからね。
K:発想ですよね。企業は個人個人の発想で企業を良くしていこうとする。同じく、市の職員さんも一人一人がそれぞれに考えて、市を良くしていくっていうのはすごく大事だと思います。職員さんとかって、そういう発想して自分で考えてっていうのが弱いイメージがやっぱりあると思うんです。
I:そうやね。今まではね。でもそれは、だんだん良くなってきているよ。さっきのも職員の提案よ。一人一人考えるようになっとるし、そうさせていくようにしているんです。
市が一番今苦しんでいることが「伝える」ということじゃね。
K:市民が、市長さんに会って直接相談できる日もあるんですよね?
I:そう。市民サロンしてます。もう300回くらいしたかな。ひと月に一回、3箇所でしています。
O:たくさん来られますか?
I:来るよ。大体、二時間半で5組みくらい来るね。三島、川之江、土居の(庁舎の)ロビーで月に3回ね。
K:私ね、近所の人達に今どんなことに困っているか聞いてきたんです。
I:ほうほう。あんたどこに住んどるんかいな?
K:M地区の方です。T工場近くの。
I:はいはい。わかったわかった。
K:こないだの9月の台風でね、N川がめっためたになったんですよ。でっかい石とかごろごろ流れてきて。それで、川の側面が大きくえぐれてしまって。ガードレールを超えてえぐれてるんですね。10月頃から1ヶ月は工事していたらしいんですけど、いきなりストップしちゃって、今止まったまんまらしいです。穴に子どもが落ちないか心配でって言ってました。
I:ふむふむ(メモをとる)河川は大体県なんよねー。でも聞いとってあげる。
K:あとね、T工場からの通勤ラッシュ時の渋滞がすごいらしくって、信号が今点滅なんですけど、その渋滞に巻き込まれて、近所の人達が会社に行くにもなっかなか国道に出られないから、
I:感知式に変えてほしいと(笑)
K:はい(笑)そんな悩みを。住んでいたら何かしらありますよね。
I:はいはい(メモをとる)
K:問題はね、何でそれを自分らで直接土居の役場(庁舎)に言いにいかんのかってことなんですよね。さっきの話に戻りますけど、市役所がそれだけ用意して待っているのに、やっぱり行かない人、言えない人、さらには知らない人だってたくさんいると思うんですよね。
I:ふんふん。
K:私の近所の人が言うには、一回ちょっと役場に行って言うたけど、ごたごたなって、追い返されたりもして、もう面倒くさいから行くのやめたっていうことなんですよね。なかなか市民の人の声は届きにくいんだって言っていましたね。
I:ふんふん、なるほどなあ。この前M地区でも来た人はおったけどのー。だから、来るとこと、来んとこと差があるんだろなあ。
K:そうなんですね。
I:「よし、みんなで行かんか!」って言う人がおるかおらんかとかな。
K:そう。それ、地域力ですよね。家のおじいちゃんは「よし行こう!」ってリーダーシップとる人でしたけど、亡くなった後、それを引き継ぐ人がいないのかもしれません。世代によって違いますよね。祖父の世代がどんどんいなくなって、そういう自治性みたいなのが失われているのは目に見えてわかりますね。
そういう伝達経路がなくなると、市と市民とのコミュニケーションはどんどんなくなっていくと思うんです。
I:うん。そう。実際、市が一番今苦しんでいることが「伝える」ということじゃね。こういう、子育て応援の資料(子育て応援の冊子を手にしながら)も作っているんだけど、伝える方法がね。
K:そう、そこなんですよ。ツールがね。
I:そう。ツールね。
K:私もHPを見て初めて、すごい色んなことをやっているんだって知ったんです。活用したら楽になる人たくさんいるだろうなって。
I:なるほどねー。
K:自分でガンガン「困ってるんです」って言いにいけない人をどうするかですよね。そういう人ほど本当に困ってると思うんですよ。
I:さっきの見返りを求めない支え合い、家族の話と同じでね、それを全てお金で済ましていっていたらものすごい額になるよね。さっきの洗濯、食事の話じゃないけどね。現実にね、例えば公務員で雇っている職員の消防士は137人おる。137人でこの町の消防、防災、救急全て守れているかというとそうじゃない。やっぱり各地に消防団がいるから、あの人達がおるから137人で済んでるわけで、もし地域から消防団のなり手がおらんようになったら…まあ、おらんようになってきよんじゃけどね。足りんから言うて公務員を増やしていけば、結果的にみんなの税金を増やしていくことになるんね。
日本の行政サービスの中で生きていけんということはないわけよね。でも、そういうサービスにありついてない人がいるわけよね。市はメニューを持っているけど、知らずに餓死したという事件があったりするわけよね。そのサービスと困っている人を繋ぐ人がおらんかったら成り立たんよね。
K:本当にそこですよね。
I:福祉だったら民生委員さんというのがあるね。市報を読まん人に「それやったら市に相談したら何とかなるよ」って繋ぎ役がおって初めて市の制度って生きてくるんだけど市役所の弱いところはそういった制度が少ないところなんです。今ね、民生委員もなり手がいないんです。毎回探しよる。自治性が落ちてきよるのも事実。だから4月からの市政は「地域力の強化」いうのは一番にあげています。
K:いやあ。それ一番大切なとこですね。
I:今、僕の方で考えているのは、きっかけ作りとして、例えば公民館単位に100万円くらい下ろすわけです。この100万円は、自治会さんとそれを囲む各種団体さんで使い道を決めてくれというきっかけを作るわけ。ほんなら、みんな集まって話し合いするよね。「おいちょっと行って予算取ってこないかんのじゃ」って。だから、前よりコミュニケーションが増えてくるよね。そのきっかけ作りを市の方でしたらどうかっていうのが一つ出てるわけ。わざと(使い道を)市で決めんと出して。自分らで決めるところから、地域の密着度が増えればいいなというのが一つ。
K:ふんふんふん。
I:それで、もう一つは、うちの職員を今の就いとる広報係とか財政係とか市民係とかいう市役所の公務とは別に、君はM地区係とか、君はN地区係とかいう風に兼務させて、「僕らがM地区担当になりました」と。「おばあちゃん何かあったら言うてくださいよ」と。そういうのをやろうかなと今計画中なんよ。地区地区に置いて、どんなことでも言える窓口を作ったらいいなと思ってね。
K:いいかもしれないです、それは。そういうところが弱くなっているから。ネット使える人や、興味持って市役所までガンガン行ける人はいいけど、そうじゃない一人暮らしの老人なんかは孤独死だってありえる話だと思いますもん。
I:いや、全然ありえるんですよ。とにかく町の運営いうのは、二極化していきよるね。昔は言葉というもんしかなかったから、お年寄りも子どもも、地域から流れてくる言葉で繋がっていたけど、今はTwitterとかブログとか使える人はいいけど、使えない人は置いてけぼりっていう二極化が進んでいるね。役所もそう。広報配って、昔ならそれプラス声かけがあったからね。最近は知らんかった方が悪いんよになってきとるね。情報格差っていうんがやっぱり深刻になってきているね。
K:うーん。目安箱置いたらどうですか?
I:入れんのー。市役所も目安箱置いとんよ。
K:そうなんじゃ…。知りませんでした。
I:置いても入れんのー。メールでも(問い合わせフォームが)あるけどなかなか言うてこんな。やっぱり出前じゃないんかな。うちらが出前せないかんのじゃないんかなあ。
K:そうですねー、今の現状では。町のことを気にかけて、大切に思って、町のためにっていう気持ちのある人も少なくなっているのかもしれないですね。個人個人っていう感じになっているのかなあ。
I:そうじゃねー。そこを何とかしようというのが今年の目標です。
(その後、どんどん話が脱線していく…)
わしね、市のこと考えるの趣味なんよね
I:で、高橋さん、今日はこんな話で良かったんかいなあ。
K:だめです!え!もう一時間半経っとる。質問も半分しかいってない!
(秘書)あの、市長、そろそろ次の来客が…
K:えー。どうしよう。まだ半分も…
聞きたかったこと。一つだけ。ずばり、正直もう嫌や、辞めたい!って思ったことありますか?
I:市長を?
K:はい。
I:それね、かなり多い。
(爆笑)
K:やっぱそうなんやー!!これ一番聞きたかったんですよね(笑)市長さんでも思います?
I:辞めたいっていう方が多い。
K:でも辞めずにいるのは
I:やっぱりこの仕事が好きなのが一つ。でもしんどい…精神的にしんどいっていうことが多いな。伝わらないっていうもどかしさと、自分が一生懸命しとんのに批判されたり、そんなことしてないのにそういうこと言われてみたり。言い訳することができないしね。子どもや奥さんのことまで悪く言われたりね。それはいろいろありますよ。
K:はー。やっぱり前に出るという仕事は大変なことも多いですよね。
I:でも使命感の方が上まっているから気持ちを支えられているのかなと思うなあ。だって給料、丸々全部いえに持って帰れるわけじゃないんよ。ほんとに。
K:、Y:ん?
I:殆ど給料やかもって帰れん。わし、出る方が多いくらいよ。
Y:持って帰れんというのは?
I:だから、生活費で渡せんとうこと。今までの蓄えで生活しよるよ家は。
K:、Y:え??えー?そうなの?
I:うん。交際費なんて合併前と比べると85%カットだしね。
K:みんなが市長さんはいっぱいお金もらってとか思ってるかもしれんけど、そんなことないんですね。
I:そうそう。全然そんなことないよ。県会議員のときからいったら手取り3分の1くらいになったもんな。まあでもそういうことでやっているわけではないけんね。やっぱり使命感とか、やりがいとか、達成感とかね。
K:、Y:立派ですねー。
I:まじめに来とるぞー。なあ毎日(笑)
(秘書)頷く(笑)
K:どんな華やかな舞台やって、表舞台と裏舞台とあるからなあ。
I:高橋さんやったらわかるやろ。
K:はい。わかりますねー。人間だから傷つくことだってありますしね。
I:個人の持つ悩みというのは良くにているかもしれんのー。自分の時間が全くないのもストレスだったりな。
Y:スーパーでお会いしたじゃないですか、こないだ(笑)
I:ああ、買い物好きじゃけんの。コンビニ行くの趣味じゃわ(笑)
K:そうそう休みのときとかは何してるんですか?
I:休みのときも、市のこと考えよる。これ、こうやったら良くなるんじゃないかなーとか、こないだのどうなったかなーとか。
K:えー!
I:本当よ。わしね、市のこと考えるの趣味なんよね。グーッとはまりやすいからね。でも、人にはあんまり会わんと家族と家で過ごすことが多いね。
K:普段たくさんの人に会われてますもんね
I:そう。だから、休みのときは家に家族と一緒におるのが幸せじゃね。
K:はい。では最後に、四国中央市の強みと強化すべき点を教えてください。
I:強みは、ほどよい田舎ということやね。海も山もすぐ近くにある。海は発展や流通、交流の基盤やからね。それから、土居町やったら1万7千人でしょう。で新宮村だったら1600人でしょう。例えばあのおいしい『霧の森大福』(http://www.kirinomori.co.jp/shop/daifuku.html)を新宮で作ったって何故売れんかったかというたら、1600人が「おらが町のお菓子は」って言うたって宣伝効果がなかったんよ。でも10万都市になって、10万人が「おらが町のお菓子は」って言うとやっぱり宣伝効果があるわけよ。だから10万人っていう数が強みの一つ。
それから、これ大事なんやけど、いくらでも大きければいいというもんではなくて、これ以上大きな市になってしまうと役所と財界と地域の人が集まって、協力しようっていうことにはなかなかならない。
K:はー。
I:地域の結束力はこの程度の町がよかったし、逆に言うとね最初から10万都市だったら結びつきが弱かったけど、土居町時代の結びつき、川之江時代の結びつきというものを今度一つに持って集まっておるから比較的まだ地域性が残っとるというのがね。
Y:仲良くやろうというね。
I:うん。手を繋げたら最高にいいよね。大きな町をいきなり手繋がすのは難しいけど、できとるやつを今度結びつけるだけだから、そういうのは強みなのかなと思うね。
K:なるほど確かにそうだと思います。では、強化すべき点はありますか?
若い子が目を輝かせて、この町に住みたいとなるような
I:やっぱり3.11以降どの地域でも言われていると思うけど、地域の絆の強化というか見返りを求めない絆の強化というのが得に必要だと思う。それと、これからこの町で強化するのはね、やっぱり若い子ね。若い子が目を輝かせて、この町に住みたいとなるような魅力性、どこかというとちゃんと稼ぐ先があって、魅力的な商業的施設があるということ。稼ぎ先は今あるんですよ。でも使う先はよその町に捨てよるね。
K:なーるほどー。やっぱり松山で買い物することが多いですもんね。私も中学、高校時代はもっぱら松山まで行ってましたね。
I:ほらね。それが地元に落ちてきたらうまいこと回っていくでしょう。
Y:でも、もうすぐ土居にも24時間スーパーができますしね。
K:そうそう、聞きましたー!!A店の近くでしょう?私心配です。A店潰れるんじゃないかって。あそこ好きで帰ったらよく行くから。それにB店も。結局そういう大型のスーパーが地元の商店潰している気がするんですよ。
I:いやいや、わしもね心配して正直どうですか?って地元に聞いたんよ。そしたら、逆に競争相手ができてこっちも頑張れるからいいですって、そう言ってくれて。みんな前向きよ。24時間スーパーにないものを地元で買うっていう相乗効果も見越してのことだと言っておったよ。
K:え!うそ!みなさん、前向きですねー。でも本当に大丈夫かなー。だって四国中央市内どこも商店街ガラーンとしていますよ。最近、大型ショッピングモールが多いですもんね。それが商店街をガランとさせる原因なんじゃないかと姉妹でも話してまして。
I:それは確かにあると思うよ。でも、一番に言えるのは、商店街の人たちにもっと頑張ってもらいたい。人通りが多かったから駅前が栄えたわけでしょう。でも今駅を使う人はあまりいない。
K:車社会ですからね。
I:その変化にいかに対応するか。他の店を排除するんじゃなくて、わざと商店街の空き店舗にチェーンの店をどーんと入れるとかね。その方が商店街は他の店も潤うと思うんよ。そういう風に知恵を絞って市に提案してもらったりしながら一緒に盛り上げていきたいんだけどね。
K:経営者の年齢が上がっているということもありますよね。
I:そうやね。最近考えてるんは、大型店でできないことを商店街でするかとかね。商店街の空き店舗にスクーターの宅配グループを作って。
K:ほほーう。
I:一つの店じゃできんよ。市内の商店街のメニューを全部載せて、お年寄りの家に配って「おばあちゃん欲しいもんあったら電話くれたら揃えて持っていくわ」って。これはスーパーにはできんでしょう。
K:そうですね。
I:そういう隙間のところで何とか売上を維持するとか。「そういうことだといくらでも手伝うよ」ってこの前川之江の商店街には言うたんよ。
K:そういうふうに新しい発想っていうのが必要になってきますね。若い子が中心になってやれたら一番いいんですけどね。やっぱり、新しい柔軟なアイデアって若い子から出てくると思うし。そういう市の体制っていうか補助は必要じゃないでしょうか。
I:ということは、商店街にも若い職員がつかんといかんの。
(秘書)はい。
K:徳島市の商店街も若い人達が中心になって頑張っていて、若い子が集まれそうなイベントを毎月考えたり、新しいお店を出したりして最近徐々に活気を取り戻していますよ。それで去年の夏、徳島の商店街の真ん中の空き店舗を借りて、個展したんです。商店街の方もすごい協力的で。で、全国からも地元からも若い子達がけっこうたくさん集まってくれて。賑わいましたよ。
I:詩の?あの画家さんとやってたやつ?
K:はい。そうです。松山でもやってたんですけどね。そちらもたくさんお客さんがきてくれました。
I:そりゃうちでもやってもらわにゃな。事務所はどこかいな?
K:ソニー・ミュージックですね。
I:ああ、乃木坂48のな。やっぱり乃木坂なん?
K:レコード会社はまさに乃木坂でしたけど(笑)
I:最近わしもようやく(アイドルグループが)わかるようになってきたんよ。
K:そうなんですねー(笑)
(外で次の来客の声がする)
K:いかん、終わらな……
今日はお忙しいところありがとうございました。
I:はい、ありがとうございました。また、よろしくお願いしますよ。
K:こちらこそ、よろしくお願いします。
END.
井原市長さんありがとうございました。
情熱と市民への思いが伝わってくるお話でした。
にしても、知っているようで目から鱗なことが多かったな…
人と人の絆が町を作る。
私が四国中央市で過ごしていた頃には当たり前だったことが
難しくなりつつある現状が見えました。
いつまでもそのまんまのふるさとであってほしい。
出て行っている身としてはそう思うけれど、私の生活が変わるのと同じように地元の生活も日々変化しています。
それをサポートする若い力が今後、一番の鍵となってくると思いました。
次は地元で頑張る若者をレポートしたい!
まだまだ追っかけます!
あ、また帰ります。